突然、転勤することになってしまった。今住んでいるマンションをどうするべきか?
選択肢としては、売却か賃貸の2つがある。どっちがお得なのかを考えてみたい。
現実としては、売却と賃貸のそれぞれにメリットとデメリットがある。どちらを選択すべきか、すべての人にあてはまる明確な答えはないというのが本当のところ。
そこで今回の記事では以下の3つを詳しく説明していこう。
- マンションを売却する場合のメリット・デメリット
- マンションを賃貸に出す場合のメリット・デメリット
- 売却か賃貸。どっちが儲かるかを算出する計算方法
転勤が急に決まり、焦る気持ちはわかるけれど、今回の記事を最後まで読めば、売却か賃貸かどちらを選べばいいのかわかるはずだ。
最後に売却と賃貸におけるそれぞれの利益の計算方法についても具体的に解説するので、楽しみにしてほしい。
マンションの売却と賃貸 比較
マンションを売却したときのメリット・デメリット
メリット | 住宅ローンの支払いから解放される。 借主よりも買主の方が見つけやすい。 |
---|---|
デメリット | 戻ってきた場合、再度住宅を確保するための手間が発生する。 再び購入すると仲介手数料等の諸経費が二度発生する。 オーバーローンの場合返済原資が必要となる。 |
マンションを賃貸に出したときのメリット・デメリット
メリット | 賃料収入が入ってくる。 戻ってきたときに新たに家を購入しなくても良い。 オーバーローンでも対応しやすい。 |
デメリット | 空室リスクがある。 家賃が低くて住宅ローンを賄えない場合もある。 管理委託費用等の諸経費が発生する。 |
---|
売却において、住宅ローンの残債が売却額を上回っている状態をオーバーローンと呼ぶ。つまりマンションを売っても、住宅ローンが完済できない場合だ。
オーバーローンで売却するには、抵当権を抹消するために売却額と住宅ローン残債の差額分を現金で用意しなければいけない。
オーバーローンの状態で、住宅ローンを完済できる現金が用意できないのなら、実質的に売却を諦めなければいけないこともあるだろう。
ローンが残るマンションを売却する方法は以下の記事で詳しく説明しているよ。
抵当権についても解説がある。また読んでみるといいよ。
ローン地獄ですぐ売りたい!ローン残高ありのマンションの売却方法とは?
賃貸に出したいときは、マンションの物件的価値によっては借り手が見つからないリスクを考えなければいけない。例えば駅から徒歩10分以上離れているような物件だと、なかなか借主を見つけることができない。
一方で、売却する場合なら、たとえ駅から徒歩10分以上離れた物件でも、買いたいという人は見つかる。
つまり、借主よりも買主の方が見つけやすいということだ。単純に比較すれば、難易度としては売却の方が簡単。賃貸の借り手を見つけるためのハードルの方が高い。
売却したほうがいいマンションの具体例
もし以下の条件にあてはまるなら売却を優先に検討したほうがいいだろう。
- 戻ってくる可能性の低い人
- 転勤補助が少ない人
- 貸しにくい物件を持っている人
再び転勤で戻ってくる可能性の低い人は売却してしまった方がもったいない場合がある。
転勤では、転勤先が気に入ってしまい、そのまま転職して住み着いてしまうという人もたまにいる。転勤先が昔から住んでみたかったようなところであればなおさら、出戻りの可能性が低くなる。再び住む可能性のないマンションなら、思い切って売却してしまうという考え方もアリだ。
転勤したからといって今支払っているローンがなくなるわけではない。
転勤では会社から、補助が出ることも多く収入が増えるケースもある。とはいえ、住んでもいないマンションに住宅ローンを払い続けるのは負担になるだろう。転勤によって経済的負担が大きくなり今のローンの支払が苦しくなるというなら、売却を積極的に検討したほうがいい。
貸しにくい物件であれば、さらに積極的に売却を考えよう。
例えば、駅から徒歩10分以上離れている交通が不便なマンションや、間取りが4LDKの賃料総額が上がってしまう広い部屋などは、なかなか借手が付かない。
借り手の気持ちになって、貸しにくいと思われるマンションは、空室が長引き、維持費だけがかかってしまうリスクがある。長く住んでいた思い入れのあるマンションでも客観的に判断を下すべきだろう。
賃貸に出したほうが良いマンション
一方で、こういう条件にあてはまるなら賃貸に出した方がいいといえる。
- 戻ってくる予定のある人
- 購入したばかりの人
- 住宅ローンが完済している人
2~3年で戻ってくることが確定しているなら、賃貸に出したほうがいいだろう。
不在の期限が確定している場合には、定期借家契約で貸し出すという方法がある。定期借家契約は、契約期間満了時、確実に入居者を退去させることができるメリットがある。ただし、退出の約束が存在する分、家賃が安くなってしまう。
定期借家契約での貸し出しは、リロケーションとも呼ばれ、専門に扱っている管理会社もある。リロケーションを行う場合は、実績の多い管理会社に相談してみるのがいいだろう。
購入したばかりで転勤を命じられてしまった人は、住宅ローンの元本返済が進んでいないため、オーバーローンとなっている可能性がある。
オーバーローンの場合は、無理に売却せず、しばらく賃貸して、元本返済が進んでから売りに出したほうが有利だ。
オーバーローンとローンが残るマンションの売却方法は別の記事で特集してるよ。
読んでみてね。
ローン地獄ですぐ売りたい!ローン残高ありのマンションの売却方法とは?
住宅ローンが完済しているなら、貸せば家賃がそのまま入ってくる。無理に売却する必要はないだろう。
住宅ローンが完済しているマンションの収益性は最も高い。賃貸経営にも余裕が出る。せっかくの資産なので、運用してお金を稼ぐという方が旨味が多い。
売却と賃貸。具体的な利益の計算方法
売却と賃貸で、どっちが具体的にいくらくらい儲かるのか? その計算方法を説明する前に、不動産によって得られる所得について知っておこう。
個人の所得には、給与所得、譲渡所得、不動産所得、事業所得、山林所得、退職所得、利子所得、配当所得、一時所得、雑所得と言った10種類がある。
ちなみにサラリーマンがもらう給料は給与所得だ。
不動産から得られる所得には2種類ある。
譲渡所得 | マンションを売却したときに得られる所得 |
---|---|
不動産所得 | マンションを賃貸したときに得られる所得 |
譲渡所得を計算する方法
マンションを売却したとき、実際どれだけのお金を儲けられるか。譲渡所得を計算すればわかる。
譲渡所得の計算式がこれだ。
譲渡所得=譲渡価額-取得費-譲渡費用
譲渡価額とは売却額のこと。マンションが売れた金額を指す。
取得費とはマンションの土地と建物の購入額を合計した金額だ。ただし、建物に関しては減価償却後の価額になる。
建物の減価償却後の価格を出すのにも公式があるが、計算がややこしく説明も長くなりそうなので、今回は割愛。
譲渡費用とは仲介手数料や売買契約書に貼付する印紙税などが含まれる。
不動産所得を計算する方法
今度は、マンションを賃貸に出したときの利益を計算してみよう。
不動産所得=賃料収入-必要諸経費
上記の公式にあてはめると賃貸経営の利益を算出できる。
賃料収入とは家賃収入のことだ。
マンションの賃貸経営は、ただ部屋を貸すだけのビジネスではない。部屋を住みやすい状態にしておくための手間暇お金がかかるのだ。
必要諸経費は、マンションの固定資産税、火災保険料、管理委託費用、修繕費、入居者募集費用、減価償却費等が含まれる。
住宅ローンについては、支払利息は費用になるが、元本返済額は費用にはならないので注意が必要。
減価償却費とは、建物の取得価格を毎期一定のルールで機械的に配分する会計上の費用。実際に支出される費用ではないのだけど、会計上の費用として認められる。
給与所得だけをもらっているサラリーマンであれば、確定申告は不要。だけど、譲渡所得や不動産所得のような給与所得以外の所得が発生した場合は、確定申告をしなくちゃいけない。
マンションを売却したときは1回だけの確定申告で済むけれど、賃貸では毎年不動産所得が発生するため、確定申告も毎年行う。こういう手間も賃貸の場合のデメリットといえる。
なお、譲渡所得も不動産所得も、計算の結果マイナスになるケースがある。
マンションのような居住用財産の譲渡所得や不動産所得は、損失が発生した場合、その損を給与所得からマイナスすることができる。給与所得からマイナスして全体の所得が減れば、節税につながる。これを損益通算と呼ぶんだ。
特に、賃貸業においては、実際の収支がプラスであっても、減価償却費によって不動産所得がマイナスになることがある。不動産所得がマイナスなら、損益通算を利用して毎年節税ができるというメリットもある。
マンションは売るか貸すかどっちが得? まとめ
こうして見てくると、なんとなく売却か賃貸かのどっちが得なのかがわかってきたと思う。
売却と賃貸のどちらが得かについては、人それぞれが持つ事情によって判断が異なる。転勤の条件や物件の貸しやすさ、住宅ローンの状況など、あらゆる方向から検証する必要がある。
何より重要なのは、あらかじめ売却した場合と賃料の場合の利益を試算しておくこと。それには不動産会社へ査定が必要になる。査定額は不動産会社によって異なるので、複数社へ依頼して、また、売却か賃貸かどっちのリスクが少ないかも相談してみるといいだろう。