マレーシアでロングステイ。なんて悠々自適な響きなんだろう。

移住用のビザを取って5年10年間の本格的な長期滞在とまではいかなくても、一ヶ月くらいでいいからゆっくりロングステイを楽しんでみたいなあ。

実は僕もそんなふうに思ってた。

実際、マレーシアでロングステイをしてみると、期待してた移住生活と微妙に違うところがあった。あまりに期待しすぎたせいで、マレーシアの現実に落胆し、予定の時期を早めて帰国を決める人も多い。僕はそこまでがっかりしなかったし、もっと長く住みたいと思った派だけど。

ネットでは、実は旅行でさえもマレーシアに行ったことのない人がまとめている記事がある。どちらかというとポジティブな目線でマレーシアのロングステイのメリットを語る記事が多い。

全部が嘘とはいわないし、中にはよくこんなにリアルに騙れるなあと逆に感心させられる記事もある。僕もマレーシアを語れば、良いことばかりが口を出る。でも本当に移住を経験すると冷静にデメリットの方も伝えたくなるんだ。

そこで今回は、本当にクアラルンプールとペナンの二箇所でロングステイの経験がある僕が、マレーシア ロングステイの現実について書いていく。治安、気候、生活費、娯楽と、ロングステイを検討している人に参考になればいいな。

なぜ、マレーシアはロングステイの場所として人気なの?

日本人にとって安心できる情報ばかりが先行しているからだろう。

テレビでもよく特集してるように、マレーシア=こういう国というイメージが根付いてる。

  • 物価が日本の3分の1
  • 食事が安くておいしい
  • 安全
  • 英語が通じる
  • 人が穏やか
  • 気候がいい

こうして見ると、安く、安全に、健康的に、便利に暮らせるマレーシアは天国みたいだ。

でも実際は違う。誰にも幸せを約束された天国とはちょっと違う。特にマレーシア人気を支えるリタイア世代こそ注意だ。年齢が高くなるほど日本人歴が長いということ。外国暮らしにうまく適応できない失敗がいろいろな方面で起こる。

マレーシアの治安は本当に安全なの?

クアラルンプールの都心は安全。郊外は治安が悪くなる。

観光旅行のときは、基本的に都心で行動する。ホテルは交通の便が良いところにあって、行くところは人の目が多い観光名所ばかり。人の目のスキを突いたスリや置き引きなど小さな犯罪に遭うことはあっても、目立つ大きな犯罪に遭う危険は少ない。

殺人や強盗のような命の危険に及ぶ犯罪は、都心よりも郊外で起きる。ロングステイで都心のホテルに住むのは、宿泊代を考えると現実的じゃないよね。普通は、真ん中の繁華街や商業エリアを避けて、静かで生活の便が良い外れのエリアに住居を構えるだろう。

殺人や強盗は、一般の人の生活区域で起こる。ロングステイをするということは、その手の犯罪のターゲットに自ら入っていくことを意味する。

ロングステイの最中に観光ガイドは付かないよ。身に迫る危険には自衛で対処しなくちゃいけない。

住居の選択肢は、一戸建てかコンドミニアムがある。常夏の国での一軒家暮らしに憧れる気持ちは僕も持ってた。でもセキュリティを重視して、最初のロングステイでは必ずコンドミニアムを選ぶこと。

コンドミニアムがどういうタイプの家かまだ知らない人は下の記事を見るといい。

マレーシアのコンドミニアムとは何?家賃はいくら?投資すれば儲かるの?

経済的な犯罪の被害者にもならないよう気をつけなくちゃいけない。トランプ詐欺とか有名だよね。旅行者を狙った詐欺だけど、手口の味噌は、日本語で近づいてくることにある。

外国だと、日本語を話す人に無条件で気を許してしまう。日本語で親近感を与え、判断力を失わせる。それが詐欺師のやり口なんだ。日本人の断りにくい性格も知り尽くしている。

仲良くなってから、お金の工面、事業への投資、ビジネスの共同起業、種類は違っても目的はお金だ。日本人が持つお金を狙った詐欺に気をつけよう。強く断る力を付けておく。

マレーシアの治安については、下の記事でもっと詳しく特集してる。不安な人は読んでみるといい。

マレーシアの治安を移住者が語る。女一人でも安全に旅行できるように

マレーシアは雨季でも楽しめる、は嘘

ガイドブック、マレーシアの旅行情報サイトを読んでると、丁寧に乾季と雨季の説明をしてくれている。

雨季に旅行することを決めた人は、当然天気のことが心配。その心配を和らげるように、「雨季でも雨が一日中降り続くことはないから、雨宿りをしながら十分マレーシアを楽しめる」と書いてある。

僕は、クアラルンプールとペナンの両方で雨季を過ごした。シトシト、じとじと、うっとおしく一日中雨が降り続ける日が確かにあった。

10年の移住計画だったら、乾季も雨季もどうでもよくなるかもしれない。でも三ヶ月以内の滞在期間なら、わざわざ雨季を狙う必要はない。乾季の方が良いに決まってるんだ。街に出て、汗だくだくで帰ってきた後のコンドミニアムのプール。自宅で泳げるなんて、マレーシアのロングステイだから味わえる。

フルーツも乾季の方がうまい。僕の東南アジアが好きな理由の一つが安くておいしい果物だ。マレーシアも他の東南アジア周辺国に漏れず、マンゴー、マンゴスチン、ジャックフルーツ、ドリアン、ドラゴンフルーツと今日はどれを食べようか決めきれないほどフルーツの種類が豊富だ。季節を間違うと食べる機会を失う。悲しすぎる。

暑さがやわらぎ行動しやすいからという理由で雨季を勧める意見もあるけど、僕はやっぱり夏派。常夏の国に行くのだから、やっぱり暑さマックスの乾季を推す。

物価が日本の3分の1のマレーシアで生活費が日本の2倍になる罠

物価が安いのは本当。だから生活費も安くなる、僕の場合で日本の半分くらいにはなったかな。

でもそれは日本の生活を日本に置いてきてるから。マレーシアで日本水準の生活は望まない。

僕と奥さんは旅慣れているから、現地の生活に溶け込むのが得意。特に食生活は、現地ローカルの安い外食でもごちそうだし、自炊も現地で採れる野菜や肉を工夫しておいしく食べてる。

でも、ロングステイの初心者には、その生活が難しいみたい。特にリタイア後の移住を狙う年代の方々は食費に注意したほうがいい。マレーシアの独特なローカルフードに興奮するのは、もってマレーシアへ引っ越した後の最初の2週間くらい。その後じわじわ日本食が恋しくなり、一度、納豆や味噌を買ったが最後、常に日本食の生活が始まる。

日本食は寿司でもうどんでも外食へ行けば日本価格の2倍を払う。日本食を自炊するときに必要な醤油や味噌も日本の2倍の値段だ。つまり、日本食じゃなきゃ嫌だと言う人の食費は、単純計算で日本の2倍になる。

日本食を好む人は、日本製品にもこだわる人が多い。100円ショップのダイソーがマレーシアにもある。行ってごらん。日本人ばかりだから。化粧品やシャンプー、健康や安全に関わるものだからね。日本製で固めたいのはわかるけど、支出がそのぶん増えることは要注意だ。

ちなみに僕の場合の生活費を以下で公開してるよ。マレーシアでの2人分の家系の参考にしてほしい。

丸裸にされたマレーシアの生活費。悠々自適な暮らしにはいくら必要?

ロングステイ中の娯楽

ロングステイは、新しい趣味を発見するいい機会になる。

マレーシアではゆっくりと時間が流れる。定年までがむしゃらに働いた人にとっては、時間の潰し方がわからず戸惑うかもしれないけど、せっかくたっぷりある時間だから、いままでできなかったことにチャレンジするといい。

マレー系、中華系、インド系が共存する人種のるつぼは、語学を勉強する場所に最適だ。マレー語、英語、広東語、北京語、ヒンドゥー語、学習できる言語は多い。

英語さえも話せないまま暮らしていくのは、本当にもったいない。指差し英語でもぜんぜん困らず暮らしていくこともできるけれど、言葉で現地の人とコミュニケーションできるのは、さらに深くロングステイの面白みを掘り下げる。

マレーシア人の友だちができれば、行動範囲が深く広く拡大する。現地人だけが知る隠れ家的なレストランに連れて行ってもらったり、スーパーの2割、3割引きの値段で新鮮な果物や野菜を買える市場を教えてもらったりできる。

僕はずっと旅行が好きだった。マレーシアを拠点にすると安くいろいろなところへ旅行できる。マレーシア国内を結ぶバスはめちゃくちゃ安い。ホテル代も日本やヨーロッパと比較すると二人分の値段がするくらいのレベルの部屋に一人分で泊まれる。コストパフォーマンスがいいんだ。

クアラルンプールからなら、イポーやマラッカへの小旅行が定番だね。もちろん行ったよ。ペナンへもクアラルンプールからなら、全然バス旅の距離の範囲内だ。シンガポールにもバスで行ける。

国外へ旅行するのも安い。エアアジアが東南アジア周辺国のあちこちに飛んでるからね。土日でカンボジアのアンコール・ワットを見に行こうか、ベトナムのハノイにフォーを食べに行こうか、そんなことが簡単にできる。

ロングステイに必要なビザ

マレーシアは、三ヶ月までの滞在なら事前に特別なビザを取る必要はない。

今の僕は、移住用のMM2Hビザを持ってるけど、その前までは毎回観光ビザでロングステイしてた。

知り合ったフランス人はすごかったよ。7年もの間、出入りしながらペナンへ住んでると言ってたから。

ビザランという方法がある。観光ビザでの滞在期間が切れる前に出国し、戻ってくる。すると、その日からまた3ヶ月の滞在期間がもらえる。それを繰り返して合計7年もマレーシアに住んでるんだって。

最近は一年の間に何度も出入りしていることがバレると入国審査でアウトになるから、全くこの方法はお勧めできないのだけど、単に3ヶ月以内をロングステイするつもりなら、何もビザのことは考えなくていい。

本格的に1年を超えてロングステイしたい人は、ビザランなんて危ない方法を考えずMM2Hビザを検討しよう。10年間の滞在許可が得られるビザだ。MM2Hビザは、単に滞在期間のメリットだけじゃなくて、投資や住居を購入する上で有利になる部分も多い。

MM2Hビザの取得条件は年齢によって変わる。申請のための書類集めが大変だけど、代行業者へ任せることもできる。僕は個人申請で取得したよ。取得の条件は以下の記事でまとめてる。

MM2Hビザの条件。誰でもマレーシアへ移住できるの?

MM2H ビザでは働けない

ロングステイ中に働きたい人は注意が必要だ。

観光ビザでは、もちろん働けない。マレーシア政府が旅行者のお金稼ぎを禁じているからだ。

MM2Hビザでも働けない。厳密にいうと、50歳以上なら専門性の高い職種で20時間までバイトはできる。けれど、そのバイトの給料だけで生活をやりくりするのは、いくら物価の安いマレーシアでも厳しいだろう。

だから働きながら長期滞在したい場合は、就労ビザを取る。

就労ビザは、就職口が決まればその会社が発給してくれる。英語が話せないと、とても就職先が見つからないと思いがちだけど、コールセンターや日本食のレストランのような日本人を対象にしたサービスはある。日本にいてもマレーシアの求人へ応募は可能だ。検索してみると、求人サイトがヒットする。

マレーシアの仕事の探し方は以下の記事を見てね。日本でできることをまとめてるから。

マレーシアの仕事探し。移住する前の日本で求人の募集はあるの?

以上のように、ロングステイについて、移住の経験がある者として個人的な意見も混ぜながらまとめてみた。僕も住んでみる前は、治安や生活費について不安があった。調べてもその不安は解けなかった。実感に値する答えが得られなかったからだろう。

ロングステイの事前にあれこれめちゃくちゃ調べ、気持ちと知識の準備をしたにも関わらず、来てすぐ帰ってしまう人もいるんだよね。でもそれって別に失敗だとは思わない。失敗は住みたくもないところに住み続けていることだ。

それをもし今の日本に感じているなら、マレーシアを試してみても損はないはず。マレーシアへ行くことが、日本の良いところに気づくきっかけになったら、それはそれで儲けもの。まずは3ヶ月以内を目安に下見を勧める。